ベビーブーマーでありながらこの戦争のことを詳しく知らないこともあり、今年は新作「日本のいちばん長い日」と旧作のそれを観、そして70年に因んでTVでは様々な企画番組や再放送が実施されたので、これらも10本近く観ただろうか。これらを観たあと好奇心が刺激され原作が読みたくなり、「日本のいちばん長い日」Kindle版、そしてこの「長い日」の上梓の切っ掛けになったという矢張り半藤一利の「日本のいちばん長い夏」新書を手に入れた。
![イメージ 1]()
![イメージ 2]()
「長い夏」は1963年6月に文藝春秋社が企画した政治や軍部の中枢から前線の将兵や銃後の人々30人を集めた座談会の内容を纏め1963年8月号に載せたものである。いちばん印象に残ったのは矢張り昭和天皇の聖断のお言葉だった。前に読んだ「陛下をお救いなさいまし」でも驚いたことだが、聖断の言葉やマッカーサーとの最初の面会の時の昭和天皇の言葉は自らの戦争責任を十分承知していた彼の心情が良く出ていて打たれるものがあった。またあの終戦の詔書の内容は、先般現代語訳で放映されていたが、一体誰が作ったものなのかがずっと気になっていた。当時の内閣に終戦を決断させた聖断のお言葉は「長い夏」の巻末に載っている。これをもとに詔書は時の内閣書記官長(新作の映画では堤真一が演じていた)が中心になって、閣僚や関わる人々の推敲が繰り返され、内閣の承認のもと公布されたことを知った。ご聖断の言葉やマッカーサーとの会見の言葉は天皇自身の口から発せられたもので事前に侍従からのサポート位はあるにしても、胸になければ易々と言葉に出て来るものではないと思う。「昭和天皇独白」や宮内庁で出した「昭和天皇実録」も覗きたくなった。
「長い日」は作者自身が言っているのだが、「長い夏」が切っ掛けとなって「長い日」を作ることになったと。当時、これは「編:大宅壮一」となっていたが、出版社の都合でそうなったという。現在の「決定版 日本のいちばん長い日」は先方の家族の了承を得て半藤一利名義となって「(決定版)日本のいちばん長い日」となったとか。大宅壮一はその序を昭和40年(1965年7月)に書いている。終戦の年8月14日の正午から15日の正午までを時系列的に閣議の様子や本渡決戦派の将校との攻防、玉音原盤の奪い合いなど当日の出来事をドキュメンタリー風に描いている。映画よりずっと判りやすく、またスリリングでもある。
両書を読んで行くと、鈴木貫太郎と阿南大臣のとの関わり、内閣のポツダム宣言の解釈、ポツダム宣言への対応、原爆開発の進捗とその利用、昭和20年4月のルーズベルト大統領の死とトルーマン大統領、ソ連への仲裁依頼とその失敗、ソ連参戦などがよく見えてくる。最近の本としては非常に面白く読んだ。そして改めて聖断の折りのお言葉と詔書を精読した。実に良く出来ている。国民に対すると言うより、軍人に対するものに近いものと「44年後の解説」の章で松本健一と語っている。